越波流量係数に関する「下地のパラドックス」解決記念の植樹
1/13 2021
本研究室で進めている越波流量係数に関する研究は、始まりはと言えば、元琉球大学教授河野二夫(享年65才)が東京工業大学助手時代に始めた研究である。波の越波流量の算定に、河川系の研究で取り扱われてきた「堰の公式(流量係数)」の概念を準用したものであり、論文著者は吉川秀夫・椎貝博美・河野二夫(1967)、発表者は河野となっている。その成果を基に、その後日本国における越波流量の研究が進められることとなる。例えば、合田の不規則波を対象とした越波流量算定図表(1975)にはそれが基礎を成している。合田の越波流量算定図表は発表以来約半世紀にも亘って国内を中心とする護岸設計のバイブルとなってきた。また、その成果は、日本国において早期の教科書となった堀川清司著(海岸工学、東京大学出版会、1973)にも説明されている。生前、河野先生は、その成果を講義中も、ニコニコしながら、たびたび説明されていた。
そのことに関して、その歴史を刻む本研究室は、5年程前から数値計算及び大型水槽実験にて波による越波流量に関する研究を始めた。これは、日本における大学としては特大規模となる大型水槽実験装置が本研究室に設置されたことに伴うもので、実物の1/2~1/5の縮尺による実験が可能となった(実験は、博士課程の田中さん、卒論担当の宮里・福森・宮岡さんらが担当)。ところが、その係数を数値計算で求めると統一した傾向を示さずバラツキが大きいという問題に乗り上げてしまった。卒業研究で数値計算を担当した当時の学生(下地さん)によれば、いくら詳細に検討してもどうにもならないということであった。この問題にはその後も悩まされることになるが、研究開始から3年目にしてようやっと2020年に解決することができた。この問題は、「下地のパラドックス」と名づけられて、その解決に相当な時間と労力が費やされた。2021年1月13日、トルコ国から送られたオリーブの木の植樹を行った。その際、下地さん(現:沖縄総合事務局)が偶然にも研究室を訪ねてこられた。せっかくだから、この植樹を「下地のパラドックス解決」の記念としようということになった。トルコ国から送られたオリーブの木の植樹は、こうして記念するとなった。